刺されるリスクが高いのは『腰が細いハチ』

野外において怪我のリスクとして心配されるハチですが、一言でハチと言っても、その種類は世界に約13万種、日本だけでも約4200種以上といわれています。
 
ハチの仲間を細かく分類していくと、まず腰が「細いか」、「広いか」で分けることができ、前者の腰が細い仲間は「細腰亜目(さいようあもく)」、後者は「広腰亜目(こうようあもく)」と呼ばれます。
 この腰が広い仲間「広腰亜目」は、ハバチやキバチなどといったハチが含まれますが、刺されることが多いのは、基本的に腰が細い方「細腰亜目」の仲間です。我々がよく知るスズメバチやミツバチなどは、この仲間に分類されています。

 

 

細腰亜目は、その下で大きく2つのグループに分けることができます。これは、ハチの象徴ともいえる「針」を「卵を産む管(産卵管)として使うか」、「武器(攻撃用毒針)として使うか」という2つの分け方です。前者は「有錐類(ゆうすいるい)」、後者は「有剣類(ゆうけんるい)」と呼ばれます。有錐類の「錘」は「キリのように鋭いもの」、有剣類の「剣」は武器の剣でもありますが、「ハチの針」という意味があります。
当然、刺されるリスクにおいて注意したいのは、針を武器として使用する「有剣類(ゆうけんるい)」の仲間です。

 

 針で産卵する「有錐類」

1)- ヤドリバチの仲間 –

 
ヤドリバチは、寄生性のハチで、日本には約2700種いるといわれています。“ヤドリバチ”の名前は、他の昆虫の体内に卵を産み付け、寄生することからこのように名付けられました。
 この仲間には、植物の葉っぱについて「虫こぶ」というイボイボの原因となったりするものや、木の幹の中に住みつくカミキリムシの幼虫に卵を産み付けるもの、テントウムシやアブラムシの体内に卵を産み付けるものなどがいます。どれも獲物の体内に卵を産み付け、ハチの幼虫が獲物を体の中から食べてしまうという生き方です。
 
こうしたヤドリバチの性質は、私たちの農業において役立てられている例もあります。農業害虫であるアブラムシなどに寄生するタイプのヤドリバチの仲間は、食う食われるの関係を利用した農薬「生物農薬」のひとつとして活用され、私たちの食生活を支える一端も担っているのです。
 
この有錐類の仲間のハチは、おしりの針を、卵を産む管「産卵管(さんらんかん)」として使用しているので、攻撃を念頭においた体のつくりではありません。そのため、ヤドリバチの仲間に襲われるという心配はしなくて大丈夫です。

 

 針を武器として使用する「有剣類」

針を武器に使用する「有剣類」の仲間は、タイプごとに大きく「セイボウの仲間」、「スズメバチの仲間」、「ハナバチの仲間」、「アナバチの仲間」の4つに分けることができます。

① – セイボウ類 - (セイボウ上科)

 
セイボウは、後に紹介するアナバチの巣の中や、サクラなどにつくイラガという「蛾」の繭の中に卵を産み込み、それらの幼虫やサナギなどを食べて育つハチの仲間です。日本では約40種が知られています。
見た目が青く輝き、とてもきれいなハチです。
セイボウの仲間には、スズメバチのように大家族で暮らす性質はなく、集団で襲われるような事故はまず起きません。

 

② – スズメバチ類 - (スズメバチ上科)

 
一言でスズメバチの仲間といっても、その種類は300種近くに及びますが、有名な「スズメバチ」や「アシナガバチ」と名が付く種類は、これの一部に含まれます。
 近年、韓国から侵入した外来種の「ツマアカスズメバチ」を含めれば、スズメバチ類が18種、アシナガバチ類が11種知られていることになります。少し踏み込んで専門的に言えば、彼らは「スズメバチ上科スズメバチ科」に含まれるハチなので、より狭い意味での「スズメバチの仲間」です。

 

一方、広い意味での「スズメバチの仲間」として言えば、泥で巣を作るドロバチ(スズメバチ上科ドロバチ科)や、クモ狩りを専門とするクモバチ(スズメバチ上科クモバチ科)などが含まれ、その数は250種以上と言われています。
 ただ、ドロバチやクモバチは刺す能力こそありますが、オオスズメバチやキイロスズメバチのように、集団で襲われたりなどの刺傷被害は発生しません。
 
「スズメバチ」や「アシナガバチ」と名が付く種類には、親と子2世代が仕事を分担しながら、同じ巣に同居して子育てを行う性質があります。これを「真社会性」といいます。集団で襲われたりするような被害が出るのは、基本的にこの真社会性をもつハチの仲間です。
 彼らが刺してくる理由は、厳密には「攻撃」ではなく「防衛」が目的ですが、働き蜂は、自分の命を捨ててでも家族を守る性質があるため、死をいとわず、刺される可能性の高いハチといえます。
 

③ – ハナバチ類 - (ハナバチ上科ハナバチ類)

 
ハナバチは、花の蜜や花粉を利用するハチの仲間で、日本では400種以上といわれています。この仲間は、花をめぐり、花粉を運んでくれることによって、自然界の花々や私たちの食を支えてくれてる大切な役割を担っています。
 
ニホンミツバチやセイヨウミツバチなどが生産するハチミツも、この花をめぐる性質によって作られるものです。
 彼らのほか、その仲間であるマルハナバチなどは、花粉を運ぶことによって、私たちの食卓に並ぶトマトなどの野菜や果物の実を作ってくれる存在でもあります。彼らハナバチが私たちの食を支える割合は、食材全体の1/3ともいわれており、彼らなくして私たちの食は成り立たない、とても大きな貢献をしてくれているハチです。
 基本的にはおとなしい性格ですが、この仲間も、真社会性ハチ類です。程度の差はあれ、働き蜂には命を惜しまずに攻撃する性質もあるので、刺される可能性があります。
 

④ – アナバチ類 - (ハナバチ上科アナバチ類)

 
アナバチ類は、分類上ハナバチに近い仲間で、その名の通り「穴を利用するハチ」の仲間です。他の昆虫を狩りして、穴の中に隠し、同時にそこに卵を産み付けます。スズメバチのような大きな家族をつくって暮らすわけではなく、麻酔をした獲物と一緒に卵を入れ込み、生まれた幼虫は、それを食べて成長するというシステムです。
 
お母さんが「夕食作っておきました。冷蔵庫に入ってるよ」と言わんばかりに、子どもにエサを残しておくのですね。
 
 アナバチには刺す能力こそありますが、スズメバチのような社会性は持っていません。そのため、巣の防衛のために集団で襲われるようなことは心配ありません。ただし、本種に限りませんが、つかんだりすれば刺されます。誤ってつかんだり潰したりしないように注意しましょう。
 

 まとめ

  • 刺されるリスクが高いのは、腰が細く、スズメバチのような『親と子2世代が仕事を分担しながら、同じ巣に同居して子育てを行う性質』である「真社会性」をもったハチの仲間。
  • ただし、それ以外のハチも、誤ってつかんだり潰したりすれば、刺される可能性があります。気づかぬうちに潰したりしないよう、注意しましょう。

 

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