本種は八重山諸島に生息するサキシマハブです。
ハブと言っても、小さめな種類ですね。

ハブ類は、沖縄、奄美、八重山諸島など、南西諸島に生息する毒ヘビです。
タンパク質を溶かす消化液となる毒をもっており、咬まれると毒牙を通して毒を注入され、咬まれた部位の壊死や、循環障害、組織障害、運動障害を起こします。近年、医療技術の進歩などによってハブによる死亡者は格段に少なくなっているようですが、そうはいっても毒ヘビは毒ヘビ。

ハブに限らず毒ヘビは、咬まれれば大きなダメージを負い、時に命にも関わることも危険生物と言えます。

≪日本の代表的な毒ヘビ≫

マムシ
ヤマカガシ
マムシ
ヤマカガシ
ハブ
ヒメハブ
ハブ
ヒメハブ
サキシマハブ
ウミヘビ類
サキシマハブ
ウミヘビ類

なぜ毒ヘビは毒をもつのか?

 
ヘビは丸飲みする生き物です。
咀嚼(そしゃく)をすることはありません。

私たちは、食べ物を噛んで細かくすることで、胃に送ったとき、胃液とよく混ざり、消化の効率がよくなるようになっています。しかし、ヘビは噛んで細かくすることはしません。

つまり、胃袋に到達したとき、その獲物の消化は表面からしか行えないことになります。もちろんそれでも消化できないわけではないので、多くのヘビでは、それで消化して生活しています。しかし、その消化を少しでも効率良くしたヘビも存在します。それが毒ヘビです。

毒ヘビの毒は、大きく二つに分けられ、タンパク質を溶かす「出血毒」と、神経系に作用する「神経毒」があります。

神経毒は効きが早く、獲物に打ち込むことによって相手を麻痺、またはそれにより殺すことで、獲物を捕獲し、飲み込む動作をスムーズに行えるようになるメリットがあります。

出血毒は、タンパク質を溶かす毒です。生き物の体は、骨など一部を除いて、基本的にはタンパク質で作られています。そのタンパク質を溶かすというのは、要は消化液である胃液と同じようなものです。出血毒をもつ毒ヘビは、相手の体の中に毒を注入することで、獲物を殺して飲み込みやすくするのはもちろん、獲物の中からも消化をすることが期待できるので、食べ物を消化する上でも役に立っていると考えられています。

大きな獲物をお腹の中に抱えたままでは、鈍くなってしまいますしね。

非常にメリットを持った、巧みな仕組みです。

このように毒は、ヘビ自身が狩りや食事をとるために使うことが本来の目的であって、防御のために利用するのは、あくまでも二次的な利用です。なので、本当であれば、彼らが私たちに咬みついて毒を消費するのは、できればしたくない行為とも考えることもできます。

実際、海外に生息するガラガラヘビなどでは、「ドライバイト」と呼ばれる、「人に咬みついても毒を注入しない現象」が知られています。これはまさしく、狩りと消化に利用する毒の無駄遣いを防いでいる例といえましょう。

本当は積極的に咬みつきたくなくても、自分が死んでしまうリスクがあるのであれば、毒も利用しながら自分の命を守る。ヘビが咬みつくというのはそういう意味があることを理解しておく必要があります。

ヘビの攻撃範囲は、全長の半分~2/3

種類にもよりますが、ヘビの攻撃範囲は、おおむね全長の半分~2/3程度です。180cmのハブで例えると、2/3だと120cmです。つまり、大きめなハブやアオダイショウでも1.5m以上離れれば、おおむね彼らの射程距離からは出ている計算になります。

日本のヘビについては、この「全長の半分~2/3程」というのが基本です。ハブなどについて“ジャンプして咬みついてくる”ようなことをいわれるときがありますが、実際は体が完全に宙に浮くようなジャンプをして飛んでくることはありません。ハブの場合は攻撃が速く、相手の体に毒を打ち込むときに咬みついてすぐに離すことから、“ハブに打たれる”という表現もあるようですが、本当に飛んでくるわけではないのですね。

ちなみに、海外のコブラの仲間の場合は、首を持ち上げている高さが、そのまま攻撃範囲になります。長さとしては、およそ全長の1/3です。

ヘビの毒牙の構造

 
日本の毒ヘビは、ナミヘビ科の一部と、クサリヘビ科、コブラ科に含まれています。代表的な種類としては、ヤマカガシ、マムシ、ハブ類、ウミヘビ類です。
南西諸島にはこれ以外にも一部毒ヘビは存在しますが、中には被害の報告がないものもあるので、毒蛇としてはまずこの4種をしっかりおさえておくのが良いでしょう。

毒牙の長さは体の大きさによっても左右しますが、マムシであれば、4.0~5.0mm程、沖縄や奄美に生息するホンハブは体が大きいので1.5cm程の長さにまでなります。
マムシやハブ類の毒牙は、根元には毒を通す管が伸びており、目の後ろ側にある毒腺へとつながっています。相手に咬みつくときは、この毒牙を相手に打ち込み、筋肉で毒腺が絞られ、毒牙を経由して相手の体に毒が入り込むような仕組みになっています。

毒ヘビに咬まれたら走ってでも病院へ

万が一毒ヘビに咬まれてしまった場合、応急処置もさることながら、すみやかに病院へ行き、治療を受ける必要があります。

かつては、「毒ヘビに咬まれたら安静にして、心拍数が上がらないようにゆっくりと病院へ」となっていましたが、近年、専門家らの調査によって、今では逆の考え方になっています(瀧ら, 2014)。
今では、「走ってでも病院へ行って、一刻も早く治療を受けるのが大切である」となりました。

この話は、2015年7月にマスコミでも取り上げられたものですが、元になったのは、2014年に発表された研究で、救急救命医らのグループが全国の病院9500箇所で集めたマムシ咬傷178例について調査したものです。
この報告では、マムシに咬まれた後に「少しでも走った人」と「救急車を待つなどして全く走らず安静にしていた人」の2つのグループの入院平均期間についてまとめています。

報告内容によると、前者の「少しでも走って受診した人」は、平均入院期間が6日ほど。
一方、後者の「全く走らず安静にしていた人」は、平均入院期間が8~9日ほどだったと報告されています。

つまり、マムシ咬症によるダメージは、早く受診した方が、症状が軽くて済んだということです。

すみやかに病院へ行く大切さについて、今までの常識とは逆のことがいわれているので、ヘビの応急処置については、今までのことは考えずに、改めて考えるようにした方がよいでしょう。

(もちろん、毒をなるべく除去するような応急処置は無駄ではありません。応急処置だけに囚われて、病院へ行くのが遅くならないようにしたい、ということです。)

ヘビ咬症の応急処置

[STEP:1] 咬傷事故が発生! 再度咬まれないように すぐに移動
[STEP:2] ヘビの種類を判断 毒ヘビ?無毒ヘビ?
(STEP:3) 流水で傷口を絞り洗い
     同時に、腕時計や指輪などの締め付けているものを外す
[STEP:4] 走ってでも病院へ

さいごに

彼ら毒ヘビたちは、自らの遺伝子を残すため…、
生きるために、毒という武器を持つことを選びました。

これも、彼らなりの巧みな進化のひとつ。

彼らには、彼らなりの暮らし方や、生活、苦労があって、日々を一生懸命に生きています。

「危険生物」という言い方は、危険な面だけを切り取った人間目線の言い方です。
ひとつの生物としてみれば、生きるために巧みな適応進化を獲得した優れた生物。

実に巧みなシステムがたくさん詰まっています。

どんなに人に嫌われようとも、
生態系を支える一役であり、地球の一員として大切な存在であることは、揺るがぬ事実。

同じ地球に住む、たいせつないのちです。